インターネット上の誹謗中傷とは、どのような例があるのでしょうか。2019年現在で掲示板や転職サイト、ブログやSNS上で誹謗中傷が沸き上がる事例が、年々増加傾向にあります。ネット上でのサービスが進化を続けていて、個人の情報発信が容易になっています。情報発信が簡単にできることの負の側面として、誹謗中傷の拡散も容易になってしまうという状況が生まれています。
SNSなどでのわずかな情報発信が、他の媒体へのネガティブな情報の拡散を呼んで、マイナスの情報が蔓延することの負のスパイラルが起こる可能性があります。
誹謗中傷が発生してしまうことの影響力や対処方法、相談先などの事前知識を知らない状態で、ある日突然、炎上の波に放り込まれてしまったとしたら、心身ともに摩耗してしまうばかりか、社会的な名誉や信用失墜などの非常に大きな影響を受けてしまいます。
誹謗中傷とはどのような状況?
誹謗中傷とは、2つの言葉が合わさった複合語になります。「誹謗」:そしること。悪口を言うこと。「中傷」:根拠のないことを言い、他人の名誉を傷つけること、この2語が合わさり、ネガティブな悪口で相手を貶めることを表します。
事実でなくても、興味本位である企業や人物に対して批判を行場合もあれば、ある事実に対して、自分なりに表現・批判することで誹謗中傷に発展することもあります。仮にネットの書き込みが事実でなくても、結果的に、対象として書かれた会社や人は風評被害により、何らかの損害を被ることがあります。
誹謗中傷が起こりやすい媒体とは
書き込まれる内容は様々ですが、誹謗中傷が書き込まれた「風評サイト」になりうる可能性が高い媒体には、下記のサイトがあります。
- 口コミ・評判サイトのレビュー
転職会議、アットコスメ、食べログ、 eマンション、e戸建てなど(不動産関係の口コミサイト) - 匿名による掲示板サイトへの書き込み
2ch、2chのミラーサイトやまとめ、爆サイ - サイトの投稿
知恵袋、OKWAVE - まとめサイト(キュレーションメディア)
NAVERまとめなど - 個人の体験談やブログサイト(日記)
消費者からのクレーム - その他
Wikipedia、Youtube、アフィリエイトやアドセンス目的のサイトなど
競合他社によるネガティブキャンペーン、元社員や内部による書き込み・私怨、ニュース記事、一時的な炎上
誹謗中傷を起こす要因とは
一般的に、ネット上で他人の書き込みに対して、炎上を煽るような人は、低所得、低学歴者などの社会的に不満を持っている人が、その不満を発する為に、行動を起こすと考えがちですが、これに限りません。
高所得者、高学歴で社会的地位がある人の中には、様々な不満をもっており、炎上を煽る場合があるようです。例えば、高収入が得ていても、家のローンの返済で自由に使うお金があまりない。日々残業が多く、自分の自由な時間がないなどです。
このような層は、今まで頑張ってきた努力や功績、自分の信条などを批判するようなネット書き込みを見つけると、通常よりも過度に反応し、ネット炎上に加担してしまうことも多いです。
ネット誹謗中傷の事例とは
インターネット上の誹謗中傷の事例には、被害状況や、関係者の立場、誹謗中傷が起こった媒体の種類など、多くの要素が関係します。実際に誹謗中傷が上がった事件にはどのような事例があるのでしょうか。
逮捕となった誹謗中傷とは
被害の度合いや社会的な影響の状況によっては、加害者が逮捕される事例もあります。
1つの事例として、元上司を実名でネット上の掲示板で中傷したとして、26歳男性を名誉棄損容疑で逮捕するという事件がありました。誹謗中傷の事例の多くは、該当の情報が削除されて、ネット上から消えてなくなり、閲覧するユーザーがいなくなれば、事態は収束していき、加害者が逮捕に至るまで及ぶ事は多いわけではありません。
状況によっては、刑事事件と見なされて、警察が出動するという事態も有り得ます。逮捕に至るまでの過程の中でも、きっかはほんの些細な発言から始まります。小さな発言によって、当事者や関係者が負のどん底に陥ることも可能性もあるので、問題が発生した時、ネット上のマナーの必要性を再認識させられるのです。
逮捕に至るもう1つの事例としては、ネット上の掲示板に「セイコーエプソン」の製品を中傷する虚偽の書き込みをしたとして信用毀損の疑いで30歳男性が逮捕されました。
大企業は、会社のブランド力、大きな信用の力で莫大な利益を動かしています。ひとたび企業に関する誹謗中傷が沸き上がると、会社のブランドを大きく損なうことになります。誹謗中傷を発信してしまった側も、対象となった企業も大きな損失を被ることになります。炎上が起こってしまった時に、当事者の間では、誰1人として得をする人がいなくなります。
誹謗中傷の問題に発展しないためには、火種となるような発言を慎むことが得策です。
書類送検となった誹謗中傷の事例とは
逮捕まで至らなくとも、書類送検に至る誹謗中傷の事例があります。
いじめによる自殺問題で、ネットの掲示板に無関係の男女を「加害者の親族」であると実名をあげて中傷したとして、名誉棄損で30歳男性を書類送検しました。情報の発信者自身はいたずらから始まった書き込みであったとしても、中傷の内容は被害者に当たる人物から見ると、自分の人生を買えてしまうほどの破壊力を持っています。
社会的にも影響の大きい事件が発生した時には、事件自体について誹謗中傷が発生したり、関係者にまつわる中傷が沸き上がる場合があります。
自分自身が罪を犯してなくても、悪意のあるユーザーが自分の名誉を低下させる内容を書き込んでくる事もあるのです。
訴訟
誹謗中傷が起こった時には、中傷にあたる内容を消去するための「削除」、書き込んだ情報の発信者を確定させるための「特定」、相手方に対しての「訴訟」、それぞれ対応が分かれます。
訴訟の事例の1つとしては、ある女性タレントが、5ちゃんねるの書き込みによって名誉を傷つけられたとして、プロバイダーに発信者情報開示を求める裁判を起こし勝訴したという内容があります。
5ちゃんねるは匿名で、書き込む「言論の自由」を最大限、尊重しているため、被害者が発信者の情報を開示するように請求を申し立てても、取り合ってくれない場合があります。裁判所を通じて仮処分を行うことで、運用者側も情報開示に従わざるを得なくなります。
誹謗中傷にあたっての状況は事例ごとに、かなり個別具体性が強いです。1つのケースで行った解決策が、他のケースでは通用しないこともあります。事態の深刻さを見極めながら必要な対応手段・相談先を決めて解決に望む必要があります。
訴訟の2つ目の事例として、女性プロ麻雀士のSさんが、5ちゃんねるに容姿等について侮辱的表現を書き込まれたとして、2ちゃんねる管理人の西村博之氏を提訴し勝訴しました。本ケースでは、誹謗中傷を巡る訴訟の例としては、複雑な例です。管理人が情報の任意削除には応じない姿勢を示したものの、慰謝料90万と、中傷に当たる書き込みを削除する判決が下りましたが、問題はこの後です。
裁判で管理人に勝訴したことで、5ちゃんねる内のユーザーが一斉に攻撃的な書き込みを投稿し始めます。中傷は自身のWEBサイトやメールアドレスにまでも及び、一時的なページ閉鎖に追い込まれた程です。
訴訟は基本的に相手方に賠償請求を問うために行いますが、訴訟を起こしたことによって、問題が深刻化してしまうという稀有な事例です。
誹謗中傷の書き込みは、どの法律に該当するか
中傷の書き込みを放置しておくと、不利益を生じることが多いため、できるだけ早めに対策をとりましょう。ネット誹謗中傷被害にあったら、以下の法律に該当しているかを確認し、まずはサイト・掲示板の運営者に削除申請を行います。
名誉棄損
公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。具体的な事実を提示して人や企業の社会的評価を低下させた場合には、名誉棄損に該当します。
「あの人は浮気をしている」という書き込みを行った場合、内容が事実であっても、書き込んだ当事者からすれば、自分の名誉が下がってしまい、公の場に、不利益な情報をさらされるわけですから、罪になるのです。
侮辱
名誉棄損に至らずとも、具体的な事実を提示しないで、人の外部評価を害する内容を書き込んだ場合には、侮辱罪に該当します。
「頭が悪い」とか、容姿についての悪口を述べたりするのは、根拠が薄くても、相手の感情を害します。名誉棄損の方が、罪は重くなりますが、侮辱罪も誹謗中傷に該当するのです。
信用毀損罪(企業や商店の場合)」
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損する犯罪です。保護法益は人の経済的な評価とされており、信用とは経済的な意味での信用を意味します。
例えば「あの会社は財務体質が良くないから、倒産の道を進む」などという発言を行った場合には、根拠を提示しないにも関わらず、該当の会社の名誉は低下させられます。このような中傷は、名誉棄損や侮辱とは異なり、信用棄損罪に該当します。
業務妨害罪(企業や商店の場合)」
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害すること(偽計業務妨害罪)、または威力を用いて人の業務を妨害すること(威力業務妨害罪)を内容とする罪です。
賠償請求を相手方に求めたい場合には、対象ページの以下、いずれかを残しておきましょう。
- ページURL(テキストファイルなどに保存)
- HTMLファイル(対象ページ上で、右クリック>名前を付けて保存>ウェブページ、完全>保存)
- スクリーンショット(URLを含める)
誹謗中傷解決の相談先とは?必要な金額の相場
誹謗中傷にあってしまったら焦りは禁物、状況を冷静に判断して対処することが必要です。自分が望む形で解決に辿り着くまでに、いくつかの手段があります。弁護士に依頼する場合や、誹謗中傷対策業者や警察に依頼する場合の方法や相場について紹介します。
弁護士に依頼する場合
対象サイト管理者が分かっている場合は、以下が解決に必要な費用の目安です。弁護士に依頼することで、費用を支払う代わりに、法的に煩雑な手続きを一括してお願いすることが可能です。
削除請求
書き込まれた情報を削除するために必要な削除請求にかかる費用です。
・着手金: 5万円~10万円程度 (インターネット誹謗中傷記事の削除請求(交渉))
・報奨金: 5万円~10万円程度 (削除が成功したら)
※報奨金をとらないケースもあります。
※裁判により削除請求の場合は、それぞれ上記金額+15万円程度かかります。
対象サイトの管理者が不明な場合は、プロバイダーに情報開示請求を行いますが、プロバイダーが請求に応じない場合は、更にこの分の弁護士費用がかかります。
発信者開示請求請求
誹謗中傷を書き込んだ、相手方の情報を特定するための開示請求に必要な費用です。
・着手金: 5万円~10万円程度 (裁判による請求の場合は、+15~20万円程度)
・報奨金: 15万円程度 (裁判による情報開示請求の場合は、+5万円程度)
誹謗中傷対策業者とは?
インターネット上の風評被害を解決する相談先の1つとして、誹謗中傷対策業者が挙げられます。こちらに依頼する場合は、以下が目安の料金になります。
- 逆SEO対策:5万円~
誹謗中傷対策業者は、風評サイトの検索順位を押し下げるために、「逆SEO」と呼ばれる対策を行います。これは味方サイトと呼ばれる、対策キーワードを盛り込んで複数作成したサイトを挿入し、風評サイトを検索結果から目立たないよう施策してもらえます。
※業者によっては上記以外の施策や、ネット監視プランなどがあります。
警察に相談、裁判
サイト・掲示板の運営者に削除を依頼しても、対応してもらえない場合は、証拠と共に各都道府県の担当部署に相談し、場合によっては被害届を提出し裁判で解決を図ります。地方の小さな警察所でも相談は可能ですが、ネット誹謗中傷関連の専門家がいない場合もあり、対応がスムーズに進まない場合もあります。
そのような場合は、各都道府県の警察本部に「サイバー対策室 (通称:サイバーポリス)」が設けられているので、そちらに相談するのが良いでしょう。
まとめ|誹謗中傷とは慎重な対処が必要
誹謗中傷の発生は、人の名誉・生き方、会社のブランドに大きな影響を及ぼし、長い時間をかけて私達個人の価値観に作用していきます。問題解決の方法も複雑化している傾向があり、対処に時間が必要です。
誹謗中傷を起こさない、巻き込まれないためには、普段から自分の発言や、人やサービスに対しての発言に配慮する必要があります。日常的にネット上で軽率な発言を繰り返しているユーザーは、中傷の火種が沸き上がった時にも、的になりやすいのです。