インターネット上での著作権の問題が度々話題になります。直近ですと2019年の3月にEUの著作権指令改正案が可決されたばかりで、世界的にも深刻な問題として取り上げられている事が分かります。
著作権とは?
著作権とは、どういった権利を指すのでしょうか?CRIC(著作権情報センター)公式サイトの説明によると、以下のとおりです。
知的な創作活動によって何かを作り出した人に付与される知的財産権(知的所有権)は特許権、実用新案権、意匠権、商標権といった「産業財産権(工業所有権)」と「その他」、そして、文化的な創作物を保護の対象とする「著作権」に分けることができます。「著作権」は、著作権法という法律で保護されています。文化的な創作物とは、文芸、学術、美術、音楽などのジャンルに入り、人間の思想、感情を創作的に表現したもののことで、著作物といいます。また、それを創作した人が著作者です。
引用元:公益社団法人著作権情報センター
文化的な創作物に自動的に付与される著作権は、原則として著作者の死後も70年間は保護されます。一般的に著作権の付与されるものとして有名な書籍や絵画、漫画、楽曲、歌詞などの他に、バレエや日本舞踊、ゲームソフト、コンピュータ・プログラムなどにも著作権が付与されます。
インターネットにおける著作権侵害の問題
著作者の許可なく著作物を使用した場合、著作権侵害となります。例外として違法アップロードではない映像や音楽などを自分で楽しむためにダウンロードする行為は法的に問題ありませんが、ダウンロードした画像や映像・音楽などをさらに別の人が利用できるようにアップロードしたり、複数の友人にシェアしたりする行為は違法となります。多くの人が利用しているSNSへの投稿に関しても、その投稿は世界中に公開されるものとみなされ、転載は違法となります。
これって著作権侵害なの?
実際にどういった行為が著作権の侵害に当たるのか、どこまでは無許可でも著作物を利用できて、どこからが該当の機関に利用申請が必要なのか、気になりますよね。いくつかの事例を用いて、どういった行為が著作権の侵害に当たるのか説明していきます。
インターネットラジオで音楽を配信してもいいの?
インターネットが普及した現代では個人でもネットラジオを配信する人もいますが、インターネットでJASRACに管理された音源を勝手に使用するのは、音楽配信が目的ではない場合(BGMや効果音で使いたい場合)も著作権の侵害に当たります。著作権が自分にある自作曲や、著作権フリーの楽曲なら利用可能です。
店内のBGMにインターネットラジオを流したい
インターネットラジオやCDの音源(CDからPCやiPadなどの音楽プレーヤーに取り込んだ音源も含む)を不特定多数の客が出入りする店舗でBGMとして勝手に流すのは公衆送信権の侵害に当たります。予め楽曲の著作権管理をしているJASRACへ利用の申請をし、使用料を支払う必要があります。ただし、インターネットラジオ業者によっては予め業者の方でJASRACに使用料を支払っている事があり、毎月支払う月額料金にその分が含まれている場合があります。
自分のブログに歌詞を掲載したい
好きなアーティストの歌詞を自分のブログで紹介したい事も多いと思います。厳密に言えば、JASRACで著作権を管理している楽曲の歌詞を掲載する場合、勝手に掲載する事は著作権の侵害となるため、許諾手続きが必要となります。ただし、アメーバブログやSeesaaブログ、楽天ブログ、Facebookなど多くのユーザーが登録しているようなサービスは、運営会社自体がJASRACと利用契約を結んでいるため、JASRACが著作権を管理している楽曲であれば非商用の場合に限り歌詞の掲載は問題ありません。
JASRACと契約を締結しているサービスの一覧はこちらで公開されていますので、ブログに歌詞を載せたい場合は参考にしてみて下さいね。ちなみにTwitterは契約がありませんので、歌詞を書き込んでしまうと著作権の侵害行為に当たります。
テレビ番組をパソコンで録画して、教材として授業で流したい
授業を行う先生が自ら録画し、授業で再生するなら著作権の侵害にはなりません。例えば、録画したデータの入っているパソコンを他のクラスで使用するために別の先生へ貸し出したり、サーバーに蓄積したりする行為や、ネット上で他の人が見る事ができるようにする行為は著作権の侵害にあたり、禁止されています。
著作権を侵害するとどうなるの?
著作権を侵害された権利者は、侵害した人に対して
- 侵害行為の差し止め
- 損害賠償
- 不当利得の変換
- 名誉回復などの措置
の4点を請求する事ができます。この4点の請求をめぐる問題が当事者同士で解決できなかった場合は、最終的に裁判所へ訴えて解決する流れになります。
また、著作権の侵害に関しては著作権を侵害された被害者が刑事告訴する事で侵害した犯人を処罰する事もできます。その場合、10年以下の懲役または1000万円以下の罰金(またはそのいづれも)という重い刑罰が下ることもあります。
ネット上での著作権侵害事例
インターネットが関わる著作権の侵害問題として、近年で一番の社会現象になった事件といえば、漫画村事件でしょう。漫画村とは、「登録不要で完全無料」と謳われた漫画サイトでしたが、実態は違法コピーされた雑誌や小説・漫画などの書籍をインターネットブラウザ上で読めるように公開している違法サイトでした。2016年の開設から口コミを通じて存在が広まり18年4月に閉鎖されましたが、朝日新聞で報じられた記事によると被害総額は約3200億円にも上ると言われています。サイトの運営に関わった複数の容疑者たちは、2019年になった今でも著作権法違反の容疑で指名手配・逮捕されています。
SNSや動画サイトにおける著作権の取り扱いと削除申請
インターネットコンテンツの中でも多くのユーザーが利用しているSNS。SNSでの著作権侵害の問題に関して、自分の投稿は大丈夫か不安に思う方もいると思います。今回は、代表的な3つのSNSと動画サイトを取り上げ、著作権の取り扱いや侵害されている投稿を見た時の削除申請について記載します。
Twitterの著作権に関する見解は「著作権に関するポリシー」にまとめられています。その一方で、フェアユース(公正使用)に関しての見解も細かく記載されています。終的な判断は裁判所の判断であり明確な基準はないとしながらも、どういったケースでは著作権に違反しない可能性が高くなるかが書かれているので、迷った時は参考にしてみると良いでしょう。
具体的に言えば、Twitterにアップされている誰かが描いたイラスト・写真を自分のアイコンにつかったり、スクリーンショットやダウンロードをして再投稿したりするのは著作権侵害に当たります。よく勘違いされがちですが、これは有名なイラストレーターさんが「ファンアート」として投稿した作品に関しても同じです。また、文章についても同じ事が言えます。他人の面白い発言をそのままコピーして自分のアカウントで発言する行為(いわゆる「パクツイ」)も著作権の侵害となります。
ブログやまとめサイトなどでTwitterの文章を引用したい時は、Twitterが認めている埋め込み機能の利用が望ましいです。埋め込み機能は公式が認めている機能のため、利用しても著作権の侵害にはなりません。
Twitterへの著作権侵害の報告はヘルプセンターから行えます。申告の際に注意しなくてはいけないのは、「Twitterは、あなたの連絡先情報を含む申し立てに関する情報を、対象の違反者にすべて開示することになります。」と書かれている点です。実は、著作権法違反は親告罪のため、Twitterでは著作権者または著作権者の正式な代理人のみが利用できるシステムであり、無関係な第三者は報告できないようになっています。
Instagramの著作権に関する項目は、ヘルプセンターの「著作権」に記載されています。Instagramでは、リグラム(リポスト)という機能があり、専用のアプリを使ってTwitterのリツイートのように他人の写真を自分のフィードに上げる事ができます。リグラム機能は「引用」と見なされて著作権の侵害とならない可能性は高いですが、マナーとして著作権者(元の投稿をしている方)にコメント欄で許可を得てから行うと良いでしょう。ただし、元の投稿自体が著作権を侵害しているコンテンツだった場合、著作権侵害行為を幇助したと見なされ違法になりますので注意して下さい。
Instagramの著作権侵害報告も専用のフォームから行えます。こちらもTwitterと同様、申告は著作権の所有者か公式の代理人のみが申請可能となり、権利所有者の名前、メールアドレス、報告の詳細は侵害している投稿者へ開示される事になります。
YouTube
YouTubeの著作権に関する規約はYouTubeヘルプの「著作権」に記載されています。こちらのページでは、「著作権に関するよくある誤解」として知らず知らずのうちに著作権を侵害してしまうケースについても詳しく説明しています。
YouTubeに関しても、規約に違反していない動画をピックアップし、公式に提供されている埋め込み機能を使って他のサイトに掲載した場合は著作権を侵害した事にはなりません。埋め込みしたい動画が著作権を侵害している動画でない事は事前にしっかり確認しましょう。
YouTubeで著作権の侵害を報告する場合は、こちらのフォームから申請します。申請する前に、対象の動画が「フェアユース」に当たるものではない事を確認しましょう。YouTubeでのコンテンツ削除申請に関しても、申請者がオリジナル投稿をした本人であるという証明と正式な要求文書を作成するために多くの情報を入力する必要があります。正しい情報をできるだけ詳しく記入しましょう。
まとめ
インターネット上で著作物を扱う際に気を付けるべきことはたくさんあります。良い音楽や画像はたくさんの人に知ってもらいたい!と思う気持ちはわかりますが、無断での使用は著作権法に違反してしまうので、使用の際は事前に権利者に確認する事を忘れないようにしましょう。著作権の違反は親告罪のため、権利者が直接申請しなければ罪にはなりません。もし著作権を侵害されていたら、権利者が速やかに申告しましょう。