会社に対する誹謗中傷事例が年々増え続けています。インターネットのサービスが増え続ける状況と並行して、会社や個人に対しての誹謗中傷が起こるケースも増加しています。
会社に対する誹謗中傷には、どのような事例があるでしょうか。実際に誹謗中傷にあってしまった時の対処法などもまとめました。
会社に対する誹謗中傷は何故なくならないのか。
誹謗中傷を防御するインターネット技術は進化しています。にも拘わらず会社に対する誹謗中傷は何故、なくならないのでしょうか。
法務省の調べでは、2017年時点でインターネット上の人権侵害に関する事件は、2,217件です。そしてこれは、5年連続過去最高を記録しているため、年々インターネット上の誹謗中傷は増え続けていることがわかります。
スマートフォンの世帯別保有率は、同年に75パーセントを超えました。またSNSや掲示板のサービスが成長しているため、インターネットの黎明期と呼ばれる1990年代と比較して、インターネットユーザーは、自らの意見をネット上で容易に発言することが出来るようになりました。
特に最近のサービスはコメント機能が充実していて、twitter、Facebook、Lineとも、拡散した情報に対して、別のユーザーが即座にコメント投稿でき、アイコンで感情表現する機能も追加され、より、ユーザーが発言に対して「参加している」実感が持てる仕組みが提供されています。
会社の誹謗中傷を行う投稿者の心理
SNSも掲示板サービスなども、コメントを発する時点で、誹謗中傷を取り締まる仕組みが出来上がっていません。後から、別のユーザーや管理ユーザーが、投稿されたコメントに対して、通報したり、削除申請を行うことは勿論、可能です。
しかし発言する時点では、コメントの責任は発信者に委ねられているのです。
誹謗中傷のつもりのない会社の悪口が、慰謝料請求に発展
誹謗中傷が引き金で、被害者に訴えられたてしまった加害者に話を聞いてみると、自分が誹謗中傷を書き込んだことが、そこまで大事になるとは思わなかったと、吐露する方もいます。
誹謗中傷のコメントを投稿するのは、初めはストレスのはけ口として、愚痴代わりに人や会社の悪口を書き込むことが多いです。誰かの愚痴の書き込みに便乗して、自分も悪口を書き込んだら、他のユーザーにも反響が出て、更に書き込みを行った。すると、数日経ってから、慰謝料の請求が届いたケースも珍しくないのです。
会社の誹謗中傷を行った発信者が問われる罪
企業に関わらず、個人を誹謗中傷にした場合でも、相手方に訴えられて、罪に問われてしまうことがあります。誹謗中傷の内容によって、どのような罪に問われてしまうか、解説します。
「名誉毀損」誹謗中傷で会社の名誉を低下させた場合
誹謗中傷によって、会社の社会的地位が低下してしまった場合には、名誉毀損に該当します。
例えば「〇〇社の部長は、横領している」「〇〇社の経営は悪化する一方だ」「〇〇は社内で不倫している」など、会社名や、役職名を上げて、掲示板などで不特定多数のユーザーの前で、相手に不利益を与えるような発言を行ってしまうと、50万円以下の罰金を科せられるなど、名誉毀損の罪に問われてしまいます。
「侮辱」会社を侮辱する誹謗中傷
会社の尊厳や社員の人権を侵害してしまった場合には、侮辱罪に該当します。
「〇〇社のサービスは無価値だ」「〇〇社の専務は無能だ」など、事実に関係ない意見で相手を侮辱する発言を不特定多数のユーザーの前で行ってしまうことは、社会的地位を低下させるに至らなくとも、拘留や科料を求められる罪に問われます。
誹謗中傷による会社への影響
問題のある発言、対応などで誹謗中傷を浴びせられてしまうのは、個人でも会社組織でも起こりえます。今回は、そうした誹謗中傷が、どのようなリスクに繋がるかを解説。あらかじめ損失の程度を知っておくことで、そうした事案に対する心構え、対処法を計画しておきましょう。
誹謗中傷が会社の採用活動へ悪影響を及ぼす
誹謗中傷の内容が、会社の雇用形態など、組織内部にかかわるものであった場合、採用活動への影響が懸念されます。
もし、炎上を放置して「ブラック企業」のレッテルを貼られてしまうと、より大きな悪評へとつながってしまうケースも考えられるでしょう。
さらに、単純に悪評が広まってしまうということは、会社としてのブランド力が低下するということでもあります。
ブランド力が下がれば、当然入社したいと思う人材も減少してしまいますので、ネットの誹謗中傷は採用活動の妨げになる可能性が非常に高いです、
会社の士気が誹謗中傷によって低下する
誹謗中傷を浴びせられ、組織としての安定感がぐらついてしまうと、従業員の士気にも悪影響を及ぼす危険性があります。
誹謗中傷によって、自分の仕事にモチベーションを保てなくなってしまい、生産性が減少してしまうケースもあります。
それだけでなく、離職率の増加や、上述した就職希望者の減少にも繋がり、二次災害的に損失が広がっていくことが考えられます。
社員の士気は目に見えない部分ですが、非常に大きなダメージになる恐れもありますので、誹謗中傷が広がってしまった場合は、しっかりとケアしていくことを忘れないようにすることが重要です。
会社の信頼性が誹謗中傷によって低下する
誹謗中傷による損失は、これだけではありません。悪評が広まると、会社の信頼性も大きく低下するおそれがあります。
信頼性とは、すなわちブランド力のことです。ブランド力が低下してしまうと、単純な売上の低下に結びつくほか、新製品の開発、マーケティングにも悪影響を及ぼしかねません。
崩れてしまった組織のイメージは、簡単には賄うことができません。
誹謗中傷による損失は、目に見える範囲よりも目に見えない範囲の方が大きくなることは珍しくないのです。
もし会社がネット上で誹謗中傷を受けてしまったら
インターネット上での誹謗中傷による人権侵害が年々増え続けている状況は企業にとっても、見過ごせない状況です。
誹謗中傷の内容が、炎上して被害が広まってしまった後では、既に社会的にも影響が出ていると考えて良いでしょう。誹謗中傷の書き込みは、すぐにユーザーに影響を及ぼすほどの力を持っていません。
しかし、他のユーザーがネガティブな情報の書き込みを始めて、それらが年月をかけて、Googleなどの検索エンジン上で上位に上がってきたとしたら、どうでしょうか。
就職活動中の大学生が、希望の就職先を探していてt、あなたの社名を検索した。検索結果には、誰かが掲示板に書き込んだ会社の悪口が表示されてしまった。これを見たら会社に対してどのようなイメージを描くか、想像はつくでしょう。
誹謗中傷の発信者を特定する
誹謗中傷の書き込みに対しての対処の困難さはネットの「匿名性」に起因しています。
会社や個人に対して、ネガティブな情報を発信する当事者が実名を明かすということは有り得ないのです。そのため、誹謗中傷を受けてしまった時に、まず行うべきは、「相手の情報を明らかにすること」です。
プロバイダ責任制限法と呼ばれる、インターネット上の権利侵害について、定めた法律があります。もし、誹謗中傷による権利侵害を受けてしまったら、この法律に基づいて、サイトの管理者(この法律上では「プロバイダ」と扱われます)に対して、情報の発信者の氏名やメールアドレス、IPアドレスなどの情報を開示するよう請求することが出来ます。
サイトの管理者に削除の申請を送る
発信者の特定と、誹謗中傷そのものの削除は別物だと捉えましょう。情報を削除するためには、サイトの管理者に対して、削除申請を送る必要があります。各サイトの規約と、プロバイダ責任制限法に基づいて、削除の申請を送りましょう。
会社に対する誹謗中傷を受けたら、「一貫性のある対応」「従業員のケア」「信頼回復」を
誹謗中傷による損失は、規模にもよりますが計り知れません。炎上を利用して逆に知名度を高める「炎上マーケティング」と呼ばれる手法もあることはありますが、基本的には誠意ある対応を心がけるべきだといえます。
誠意と一貫性のある対応を心がけ、モチベーションが低下した従業員のケアも忘れず、少しでも信頼回復に務めるのが、誹謗中傷を受けたときの対策としてはベターです。もっとも重要なのは再発防止ですから、社内のシステムも徹底的に見直していきましょう。
まとめ│会社の誹謗中傷防止は普段の体制づくりから
会社に対する誹謗中傷が発生しないようにするには、会社のブランドを守る風土や、従業員の不満がたまらないようにする体質が必要です。会社の在り方や働く人たちのケアや待遇を今一度、見つめなおす契機だと捉えましょう。