インターネット上で誹謗中傷にあったら、どのように対応すべきでしょうか。2017年現在、インターネット上の誹謗中傷・人権侵害に関する事件が2,217件、発生しています。2014年以降、ネット上での炎上事例も年々増加傾向にあり、青少年による悪ふざけの投稿がきっかけで炎上が起こり、企業のブランドを低下させてしまい、損害を発生させるという事件が多発しています。
ネット上では、誰もが炎上ネタを探していて、個人や企業の至らない点を揶揄するような発言が、インターネット上のSNSや掲示板によって拡散されることで、個人や企業名で検索をかけた時に、ネット上にネガティブな情報が蔓延してしまうという状況が生まれています。
実際にインターネット上で誹謗中傷にあって、不快な目に合うだけであれば、被害はまだ軽い方です。中傷の度合いが酷かったり、あまりに多くの媒体上に拡散されている状況であれば、社会的に影響が出始めます。
個人の場合であれば、誹謗中傷によって、就転職や進学にも影響が出てしまうなど、自分自身の名誉が著しく低下してしまう状態になります。企業の場合でも誹謗中傷が起これば、商品やサービスが売れなくなるなど、売り上げに影響が出るという状況になります。
ネット上の誹謗中傷の内実はどのようなものなのでしょうか。実際に誹謗中傷に合ってしまった時の相談先や、法的な問題についても紹介します。
インターネット上の誹謗中傷の事例は?
インターネット上の誹謗中傷は10件取り上げれば、10件とも千差万別で、同じような事例は存在しません。各事例の中傷の様相や、解決策もそれぞれ異なるため、同じ対処方法が、別のケースで同様に通用するとは限らないのです。
新しいインターネットサービスが登場する度に、誹謗中傷が発生するのは不可避です。インターネットが提供する便利さの別の側面として、誹謗中傷の問題が付きまといます。中傷のリスクを恐れすぎて発言をしない、のではなく誹謗中傷が起きたときのケーススタディを知っておくことで、自分が被害者になってしまった時の対処法が掴めるようなります。
いくつかの誹謗中傷の事例を見ておきましょう。
大学教授のインターネット上の誹謗中傷が問題に
2013年に中部地方の大学が、匿名掲示板のスレッドに書き込んだ内容に対して、書き込みを行った人物の情報開示を求める仮処分を行いました。仮処分とは、裁判の結果が下る前に、暫定的な措置を行う処分の事です。
開示請求が行われたのは、同大に所属する教授が、大学に対して中傷を述べる内容を書き込んでいることによるものでした。中傷の内容は、組織内の不正や内部に起こっているハラスメントなどについて、暴き立てるようなことが書かれていました。
学校側が、掲示板の運営側に開示請求を求めたことで、教授が中傷を書き込んでいることが判明しました。学校側の内部の問題を浮き彫りにするような内容で書き込まれていた内容が、関係者から発信されてしまっていたことで、本人と大学側ともに、軽率な行為を省みる結果になりました。
誹謗中傷を書き込む人物は、はじめから悪意を持っている人ばかりではありません。不満のはけ口や自分の本音をさらけ出す場所として、掲示板などの場所を選び、軽い気持ちから中傷を書き込みます。ネガティブな発言が始まると、他のユーザーも発言に便乗し始めて、情報の負のスパイラルが起こります。
後ろ向きな情報が拡散され続けることで、中傷の情報が世間的にも認知され始めて、関係者の目に触れてしまうことで、このような出来事に至ってしまいます。
誹謗中傷は火種が小さいうちに対処するのが最適と言えます。
インターネット上のなりすましによる誹謗中傷事例
Aさんは東京都内に暮らすOLです。ある時期から携帯電話に、男性から恋愛を求める内容の電話が頻繁に掛かってくるようになりました。
同じ内容の電話が1日に何件も掛かってくることが増えてきて、不審に感じたAさんは、思い切って電話をかけてくる当人に、どこで連絡先を知ったのか聞いてみることにしました。
男性に事情を聞いてみると、ネットの掲示板上で、名前と連絡先、恋人募集中である旨のメッセージを見つけたため、メッセージの内容に従うまま連絡してきたと説明しています。
混乱してしまったAさんは、自分の名前をインターネット上で検索したところ、同姓同名の情報が検索にヒットする中、確かに男性の主張の通り、自分の名前を語って「恋人募集中」というメッセージで連絡先が公開されているページを発見しました。
個人情報を公開され、自分の名誉が貶めれられる形で情報が公開されてしまったことに、憤りと心理的な疲労を感じてしまったAさん、相談先として弁護士の窓口の門を叩くことを決めました。
インターネットの誹謗中傷の相談先
自分が誹謗中傷にあってしまったら、どこに相談すれば良いでしょうか。誹謗中傷の被害となってしまった時、心理的ダメージは非常に大きく、藁をもすがる思いに苛まれます。書き込まれてしまった誹謗中傷を今すぐにでも消し去りたい、焦燥感にかられて辛い思いをすることになります。
焦る気持ちから、中傷を書き込んだ相手に対して、攻撃的になってしまったり、闇雲に行動してしまうことで、事態は一層混濁してしまうことがあります。
誹謗中傷を解決するための相談機関は、私達が思っている以上に、窓口をオープンにしています。問題解決を困難にしているのは、誹謗中傷がひとたび起こってしまうと、同じような事例で当てはまった解決方法が、次のケースで当てはまりづらいということです。
個別具体性が強く、ケースバイケース、状況に応じた対処が求められます。誹謗中傷の事例は、インターネット上にもたくさん掲載されていますので、自分の状況に応じた機関に相談してみましょう。
インターネットによる誹謗中傷の法的解決を行う弁護士
誹謗中傷は、自分の名誉や会社の名誉、ネットワーク上の手続きなど、法的な問題が発生します。
法律の専門家である弁護士は、問題解決のスペシャリストであり、ネットに強い弁護士であれば、多くの解決事例を有しています。
WEBサイト管理者に対しての削除申請や、中傷を書き込んだ相手方の情報の開示請求は、法的手続きになります。法的な手続きは、普段このような問題に当たる機会が少ない一般人にとっては、非常に煩雑で、時間を要する内容です。
弁護士は、私達より遥かに多くの解決実績があり、解決速度も早く、対応が安定しています。
面倒な手続きを弁護士に一括で依頼することで、問題解決が進んで、ほとぼりが冷めるまでの間は、自分自身の仕事や名誉回復に注力することが出来ます。
インターネットの誹謗中傷対策専門会社
弁護士以外の相談先として、誹謗中傷の対策を専門に扱う風評被害対策業者が挙げられます。
誹謗中傷が書き込まれてしまった掲示板やSNSに対しての削除や、相手方への訴えは、弁護士を通じて行うのが適切ですが、ネガティブな情報の拡散防止や、検索エンジンから中傷にあたる情報が検索されてしまうことは、弁護士には対応できない範疇になります。
インターネットの専門家である風評被害対策業者であれば、このような情報拡散を防止するための施策や、検索エンジンで誹謗中傷にあたる情報を上位化させないように対策することが可能です。
誹謗中傷の被害の度合いや状況に応じて、弁護士に依頼すべきか、業者に依頼すべきかを決めましょう。刑事事件として取り扱われても良いほどのレベルの内容であれば警察に相談することも検討できます。
軽めの相談先としての窓口を求めている場合には、法務局などに相談することも必要です。
法務局は人権擁護を目的としているため、インターネット上の人権問題についての相談窓口としては、頼りに出来ます。
インターネット上の誹謗中傷に関する法律
インターネット上で誹謗中傷を書き込むのを、中傷の的になるのも、人です。ネット上は公的な空間ですから、当事者間だけの問題ではなく、情報を閲覧する第3者が大勢います。
インターネット上で誹謗中傷が沸き起こってしまうと、インターネットサービス上の問題だけでなく、法的な問題に踏み込みます。誹謗中傷を起こした情報の発信者が法律に反した行動を行っているのであれば、被害者の権利は当然、法律で守られて然るべきです。
ネット上で問題が沸き上がった時に、どのような法律に触れるのか知っておくことで、自分が被害に合ってしまった時に、泣き寝入りすることなく、相手方に対して、正当性を訴えることが考えられます。
誹謗中傷による「名誉毀損」
事実を提示することで、人の名誉を低下させると名誉毀損に該当します。「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」した場合に、罪に該当すると、刑法にて定められています。
インターネットの掲示板やSNS上での書き込みは、多くのユーザーが利用していて、書き込みを閲覧することが可能という状況のため、公益性のある場所であると言えます。実際に名誉棄損の罪に触れてしまったユーザーの中には、始めは誰かの中傷を書き込むつもりはなかったというケースがあります。
会社や人の愚痴をこぼすだけのつもりが、次第に内容がエスカレートしていき、相手方に訴えられるまでに至ってしまったということがあります。中傷に当たる内容が「公的に相手を中傷するつもりはなくて、プライベートな発言が始まりだった」ということは多いです。
掲示板やSNSは、私的な繋がりを楽しむことが出来る場・ツールとして機能していますが、プライベートでネガティブな発言が公的な場所で展開することで、情報の受け手である当事者の名誉を低下させる結果を招いてしまうこともあるのです。
誹謗中傷が名誉棄損に該当する場合の慰謝料は、個人の場合で50万円以下、事業主の名誉毀損の場合には、100万円以下が相場になります。
インターネット上での「侮辱」
名誉棄損は、事実を提示することで人の名誉を低下させる行為に該当しますが、抽象的な表現で、相手を軽蔑してしまう場合には侮辱に該当します。
事実を提示する必要がない分、容易に中傷することが出来てしまうため、安易な気持ちでネガティブな書き込みを羅列してしまった挙句、他のユーザーが悪口に便乗してきて炎上、中傷の的になったユーザーから訴えられるという、誰も得をしない、不利益の循環しか及ぼさない事例もあります。
誹謗中傷の的にならないためにも、自分の発言が誹謗中傷に発展しないためにも、普段からネット上の発言にはマナーを心がけて、不用意な発言が炎上の火種にならないように配慮することが必要です。
誹謗中傷によるプライバシー権の侵害
本人の意図に反して、人の個人情報やプライベートに関することを公表してしまうと、プライバシーの侵害に該当します。
本人の情報は、事実を元にしていることが前提となるため、全くでたらめな情報を言いふらすことは、逆にプライバシーの侵害に該当しません。
職場などで、企業側は従業員に対してはプライバシー保護に配慮することを求められます。
業務遂行に関わりのない私的な領域に干渉したり、第3者が情報を開示することは、プライバシーの侵害と見なされます。
誹謗中傷が起こった場合の開示請求
インターネット上での誹謗中傷にあった時、問題解決を阻むのが、ネットの「匿名性」という問題です。
誹謗中傷が問題になった時、このネット上の匿名性が、隠れ蓑となって、中傷を書き込んだユーザーに対して、訴えを起こしたくても、氏名や連絡先が不明のため、アクションを起こせないという状況が発生します。
問題解決のためには、まず相手方の情報を明らかにする必要があります。
インターネット上での誹謗中傷の問題解決のために定められた「プロバイダ責任制限法」と呼ばれる法律があります。相手方の情報を把握したい場合には、この法律に則って、サイト管理者やプロバイダに対して開示請求を行います。
インターネットでの誹謗中傷発信者のIPアドレス特定
相手方の情報を明らかにするには、まず情報の発信者が残した痕跡を辿りましょう。
IPアドレスはインターネットに接続するときに、それぞれの端末に割り当てられる住所のような番号です。
誹謗中傷を書き込んだユーザーがWEBサイト上に残したIPアドレスを把握することで、ユーザーの情報特定に繋がる第一歩が開けます。
サイト管理者に対して、IPアドレスの開示請求を行うことで、発信者のIPアドレスを特定することが可能になります。
プロバイダに対して、誹謗中傷の発信者情報開示請求
IPアドレスを把握することが出来たら、プロバイダ情報特定のサービスを利用することで、情報の発信者がどのインターネットプロバイダを利用しているかを把握することが可能です。
インターネット接続業者であるプロバイダは、利用者であるユーザーの登録情報を保管しています。
開示請求を行うことで、登録された契約情報と、ネット利用時のIPアドレスを照合して、ネガティブな情報を書き込んだユーザーの情報が明らかにされます。
まとめ|誹謗中傷がインターネット上で起こっても解決の糸口はある!
インターネット上での誹謗中傷にあったら、的確な対処が望まれます。誹謗中傷があがってしまうと、法的な問題やネットワーク上の問題など、対応に苦慮すべき点が噴出します。
冷静に対処していくことで、ネガティブな情報が巻き起こす負のスパイラルはやがておさまって、インターネット上に巻き起こった誹謗中傷の嵐は、やがて収まっていきます。
誹謗中傷が巻き起こり、自分の名誉が酷く傷ついても解決の糸口は必ずあります。冷静に解決策を探していきましょう。