2012年には流行語大賞にノミネートされ、ネット流行語大賞では1位に選ばれた事もある「ステマ」。流行したとはいえ、イメージの悪い言葉として覚えている方も多いでしょう。本記事では、どういった行為がステマに当たるのか、もしもステマ記事を見つけた場合は削除できるのかという事についてまとめていきたいと思います。
ステマってなに?
ステマとは、「ステルスマーケティング」の略称です。ステルス(stealth)は英語で「隠密・こっそり行う」という意味で、その意味の通りステルスマーケティングとは企業の人物、または企業から依頼を受けた人物が、消費者を装って他の消費者にばれないように企業(またはその企業の商品)の宣伝を行う行為の事を言います。
ステマの手法は主に2種類に分類され、企業に所属する人物が自ら消費者になりすまして企業の宣伝を行う「なりすまし型」と、企業が影響力のある第三者に金銭など利益となるものを支払い、その事実を隠した上で企業の宣伝を行わせる「利益提供秘匿型」があります。どちらも一般の消費者が宣伝しているように見せているという事が共通点です。
なんでステマが横行するの?
そもそも、ステマが横行した理由は、「自分の身近な人が『良い』と言っていると共感しやすい」という消費者の心理を逆手に取った宣伝手法であるからといえます。企業が大々的に宣伝すると、良い事しか書かないのが当たり前であるため「嘘くさい」と思われる事もあり、敬遠されてしまいます。それに対して一般人の率直な感想は、「書こうと思えば悪い事も書けるのに、良い事を書いているという事は本当に良いものだ」と感じてもらいやすいのです。こういった心理に関しては、有名なインスタグラマーやユーチューバーが自分のアカウントを使って商品を紹介している投稿が人気である事を見るとイメージしやすいと思います。
どんな行為をするとステマになるの?
実際にはどんな行為を「ステマ」と呼ぶのでしょうか?例えば、下記のような例が言えます。
- あまり話題性のない新しいお店がオープンする際に、ボランティアやアルバイトなどの人を集めて店の前に並ばせ、その様子を写真などに撮って人気店のように報道をする
- 人気のインフルエンサーに依頼して、広告とは分からない形で自社の商品の良いところを書いたおすすめ記事を書いてもらう
- 自社の商品サイトで、「人気ランキング」を故意的に操作し、人気の低い商品を人気商品のように見せる
同じように使われる語句としては、「やらせ」「サクラ」「自作自演」などが挙げられ、どれもマイナスイメージの言葉として使われています。
ステマって違法なの?何が問題?
良くないイメージで知られているステマ。ステマがキーワードになるニュースも多く報道されるので、「ステマ=違法」と考える人も多いのではないでしょうか。では、ステマがなぜ悪いのか、どういった法律が関係しているのか、詳しく見ていきたいと思います。
ステマは信用を失う行為
ステマは、一言で言うなら「消費者を騙す行為」です。インターネットが普及した現在では、商品の購入を実店舗ではなくインターネットのショップで購入する機会も増えてきました。それに伴い、ネットではできない「お試し」を補う情報源として、口コミやレビューの影響力が増大しました。初めてのお店を選ぶ際にグルメサイトのレビューを参考にしたり、新しいものを買う際、先に購入した人が書いた使い勝手を紹介する記事を読んだりする事は多くの人が経験していると思います。口コミを信用して商品の購入可否を決める人もいるでしょう。そのため、口コミの嘘はそういった消費者の信頼を大きく裏切る行為となります。
それだけではなく、もしもステマ広告だと見抜かれた場合、そういった行為を行う企業だという事がSNSなどで拡散されで炎上する事もあります。たとえ時間が経って事態が治まったとしても、「ステマをする信頼のできない企業」というイメージは中々消えてくれるものではありません。
ステマは違法?削除できる?
現在の日本の法律では、「ステルスマーケティング」という行為が明確に違法であると言えるような決まりはありません。ステマに関係するものには「景品表示法」という法律があり、そのうちの「優良誤認表示の禁止」「有利誤認表示の禁止」に違反しているかどうか、という点が削除が認められるかの判断基準になるでしょう。
「優良誤認表示の禁止」「有利誤認表示の禁止」とは、それぞれ「宣伝しているものが実際よりも過剰に良いものであると誤解させるような広告にしてはいけない」「宣伝しているものが過剰に安く見えるようにする広告にしてはいけない」というものです。もしもステマ広告を掲示している同業他社のせいで自社の商品の売上が落ちて困っているなどの理由で問題のステマ広告を削除したい場合は、景品表示法に違反していないかをしっかり検証する必要があります。景品表示法については、消費者庁のサイトでガイドブック(PDF)が公開されているので、そちらも参考にしてみて下さい。
実際にあったステマ事例
実際に起こったステマによる事件とはどのようなものでしょうか。身近にあるSNSやオンラインショッピングサイトで起こった事件を見てみましょう。
Instagramでのステマ事件として大きく話題になった案件にひとつとしては、2017年に発覚したあるメディア運営会社の社員が、自社の運営する青汁ランキングサイトの宣伝を第三者の一般人として行っていた事件が挙げられます。取り扱っている内容が「ダイエット」という女性の興味を引きやすい内容であった事から、2万人を越えるフォロワーがついていました。宣伝していたサイトは、この社員が所属する会社が運営しているサイトだったため、これは「企業に所属する人物が自ら消費者になりすまして企業の宣伝を行う『なりすまし型』のステマ」と言えます。
ステマである事が明るみになった経緯は、「会社の指示でInstagramを始めた」というTwitterの投稿が見つかった事でした。「裏アカウント」とされるTwitterには、Instagramの運用に関する愚痴やフォロワーの誹謗中傷なども書かれていたため、火に油を注ぐような形で炎上となりました。2ちゃんねる(現:5ちゃんねる)のinstagramダイエッタースレでも検証・監視が行われたりと話題にもなり、問題となったメディア運営会社はこのInstagramのアカウント所持者を同社の社員のものであると認めた上でホームページへ謝罪文を掲載し、社員が運用していたInstagram・Twitterのアカウントや運営していた青汁ランキングサイトを閉鎖しました。
楽天市場
楽天市場での大量な不正レビュー投稿に関しては、2015年にあるシステム会社に対して2億円の損害賠償を請求したケースがあります。
訴状によると、楽天市場のレビューは、購入者が5段階の点数とコメントを書き込む仕組み。店側の自作自演は利用規約で禁止されているが、デ社は楽天市場に出店している121店と契約を結び、架空注文や好意的なレビューの書き込みを繰り返した。楽天側は平成26年1月以降の調査で少なくとも約11万4千件の不正を確認。
これは、当時の楽天市場のシステムが、「好意的なレビューが多い店舗ほど上位に表示されれる(=流入数が多くなる)」という仕組みであったため、その仕組みを悪用したステマをビジネスとしたシステム会社が訴えられたという流れです。この事件に関しては、システム会社側が不正投稿の削除と再発防止を誓約し、1千万円の和解金を支払う事で刑事責任は逃れたという結末ですが、楽天市場は「不正行為について今後も対処していく」としています。
ステマ記事に対する各機関の削除方針や対策について
さて、ステマは現在の日本の法律では明確に違法とは言えず、司法で裁くことが難しいと言えますが、だからといって消費者を騙すような行為を簡単に見逃して良いものでもありません。そのため、インターネットのサイトを運営する会社が独自にステルスマーケティングの禁止に繋がるルールを設ける事で対策を進めているのが現状といえます。増え続けるステマ広告に対し、それぞれのサイト運営者はどのように対応をしているのでしょうか?
Yahoo!(Yahoo!ニュース)
Yahoo!では、Yahoo!ニュースの記事で行われるステマに関する考え方や方針に関して「編集コンテンツと誤認させて広告を届ける行為(ステルスマーケティング、いわゆるステマ)に対する考え」というスタッフブログで触れています。Yahoo!ニュースではニュース提供の契約を結んでいる各社に対し、「広告」という表記のあるなしに関わらず記事中のリンクから広告に誘導する行為自体を禁止しています。契約違反の場合には、契約解除に加え、Yahoo!ニュースが被った損害と失った信用を回復するためにかかった費用などの請求など厳しい処罰を科すと記されています。
Google(Googleマイビジネス)
新しい店や、慣れない場所で咄嗟に休憩したくなった時にGoogleマイビジネスを活用する人も多いと思います。
Googleマイビジネスでは、ユーザーからの口コミが投稿できるので、そのレビューを見れば初めてのお店でも大まかな雰囲気が掴めて大変便利です。その一方で、Googleマイビジネス内でもステマと見られるようなコメントが多く見られるようになりました。
Google では、スパムの自動検出システムを使用して、スパムの疑いのあるクチコミを削除しています。正当なクチコミが誤って削除されることもありますが、こうしたスパム対策は、Google に表示されるクチコミの信憑性、関連性、有用性を高め、ユーザーに質の高いサービスを提供するうえで効果を上げています。
Googleマイビジネスでは、「評価を操作する目的で投稿されたコンテンツ」の投稿が禁止されています。また、「自分の店やサービスの口コミを投稿する」「現在または過去の職場に関するコンテンツを投稿する」「競合他社に関するコンテンツを投稿し評価を操作する」の3点も禁止事項として明記されています。そういった口コミは自動検出プログラムによって削除することで公正な状態を保っているようです。
まとめ
現状、日本においてステマに関する法規制は明確ではなく、通報などによる自主規制に留まっています。インターネットのサイトにおいては、それぞれ独自のルールで規制している所も多いため、ステマと判断されたコメント投稿などは運営側に許可なく削除される可能性がある事も覚えておきましょう。同業他社のステマ広告が原因で困っている場合は、そのステマ広告が景品表示法に違反している広告であれば削除してもらえる可能性もあります。違法ではないからといっても、ステマは大事なお客さんでもある消費者を騙す行為であり、ステマである事が暴かれた場合は取り返しのつかない程に信用を失いますので絶対にやめましょう。