ネット上で誹謗中傷被害に遭った場合の解決策をアドバイスしてくれる機関のひとつとして、法務局の存在があります。法務局というと、馴染みの薄い方も少なくないかと思いますが、実は誹謗中傷被害のセーフティとして、法務局は大きな助けになります。
本記事では、誹謗中傷被害における法務局の立ち位置、どう協力してくれるのかという点から、警察との違いについて解説していきます。
法務局とは?
全国各地にある法務局は、商業登記や不動産登記など、民事行政手続きにおいて馴染みのある方も少なくないかと思います。そんな法務局とWeb上の誹謗中傷対策、一見関係がないと思われがちですが、実は業務の一環として「人権擁護」も、法務局の活動内容に含まれています。
「人権擁護」は、本記事で取り扱う「名誉毀損」をはじめとする誹謗中傷も含まれます。近年では特に、Web上における誹謗中傷被害の発生件数が多いことから、ネット誹謗中傷被害に遭った際の相談も請け負っています。
それでは、この法務局では、ネット上で誹謗中傷被害に遭った際に、被害者に対してどういった取り組みをするのでしょうか?次の項で具体的に解説していきます。
ネット誹謗中傷被害にあったら法務局は何をしてくれる?
ネット誹謗中傷被害に遭った場合、法務局が行うのはまず「被害者への助言」です。その後、被害者の要請をプロパイダが受諾しない場合は、法務局が直接プロパイダへ削除要請を行います。
上記のとおり、あくまで法務局は、削除要請のサポートをする立場にあります。そのため、法務局の協力を仰ぐには、まずは被害者自身が誹謗中傷の発信者に連絡を取り、削除要請を行わなくてはなりません。
また、法務局に相談する際には、誹謗中傷記事や投稿の内容、サイト名、サイトURLなどの情報を一通りまとめ、スムーズに相談できるようにしておきましょう。
ネット誹謗中傷を防止するための啓発も行っている
もちろん、法務省の人権擁護機関ではネット誹謗中傷をはじめとした人権侵害の相談に乗るだけではなく、人権侵害が起きないように「インターネットを悪用した人権侵害をなくそう」を強調事項として掲げ、啓発活動も行っています。
例えば、法務局がYouTubeで公開している「自分の胸に手を当てて」という啓発ビデオ。こちらは現代の子どもたちにとって身近な問題のひとつとして、「学校裏サイト」や「ネットいじめ」をテーマに取り上げています。15分程度のアニメーションで子供にもわかりやすい内容になっているなどの工夫があります。
こうした子ども向けの内容から、「ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動」や「同和問題(部落差別)に関する正しい理解を深めましょう」といった問題も含め、インターネットを利用する誰もが人権侵害の加害者・被害者にならないための正しい知識を伝える内容など、広く啓発活動を行っています。
それでは、続いて『法務局』と『警察』との違いについても触れていきます。
法務局と警察との違い
法務局と警察の最大の違いは、「プロパイダに対し、投稿内容を削除させられるか否か」という点です。警察は刑事事件の解決に動く機関ですから、ネット上の誹謗中傷に対しては、そもそも刑事事件として立件できなければ動くことはできません。
その目的も、誹謗中傷を行った犯人を逮捕するのが主目的になるため、参考資料になりこそすれ犯罪の取り締まりに直接の影響がない投稿の削除は、業務の範囲外になってしまうのです。
それに対し、冒頭で述べた通り法務局の役割は「人権擁護」です。放っておけば風評被害が広まりかねない「誹謗中傷書き込み」は、その存在自体が人権侵害にあたりますから、その投稿の削除が主目的になります。
総合して、記事を削除してほしい場合は、法務局に相談するのが第一といえます。
ネット誹謗中傷の被害を法務局に相談する方法
インターネットの誹謗中傷に関する悩みを相談したい場合は、法務局の公式サイト内にある「人権擁護局フロントページ」から相談する事が可能です。
セクハラなど女性の人権に関するものなら「女性の人権ホットライン」、いじめや虐待など子どもの人権に関するものなら「子どもの人権100番」など、さまざまな窓口が用意されているので、自分の悩みに当てはまる窓口から相談しましょう。
インターネットにおけるプライバシーの侵害や名誉毀損については、実際に法務局で相談を受け、解決した事例も紹介されています。
全国的に報道された刑事事件に関連して、その事件とは無関係の人(相談者)が事件の被疑者の関係者であると虚偽の報道をされた。氏名や画像がインターネット上のブログやSNS、動画投稿サイトに掲載された。
相談を受け、法務局で調査。上記の書き込みが相談者のプライバシーを侵害し、または名誉や信用を毀損していると認められたため、法務局からサイト管理者に対して再駆除要請を行った。
法務局は国の期間として中立公正な立場で相談に乗ってくれます。人権擁護機関の調査救済制度は「簡易」「迅速」「柔軟」を心がけており、インターネットの誹謗中傷をはじめとした人権侵害に悩んでいる人に寄り添う機関として心強い助けとなってくれるでしょう。
まとめ
「人権擁護」を掲げる法務局は、誹謗中傷被害に遭った時に相談するべき機関のひとつです。どのように削除要請するべきか助言してもらい、削除に応じない場合は法務局自ら削除に出向いてくれますから、誹謗中傷削除の確実性も高い方法といえます。
しかし、事件性が考えられるなど、本格的な法的手続きが必要な場合は、弁護士等の専門家に依頼するのも手です。もし誹謗中傷被害に遭ってしまった際は、落ち着いてさまざまな方向を検討し、解決に乗り出してみましょう。