ネットの書き込みを行った発信者特定をするためには、どのように対応すれば良いのでしょうか。インターネット上での書き込みに対して、何らかの措置を行う場合に、まず発信者特定を行うことに労力が必要です。
インターネット上では匿名性が担保されているために、何かトラブルに突き当たった時、発信者の情報を特定するまでに、まず時間が必要です。相手方の情報を掴むために行わなければいけないものは何か、各サイトごとに必要な手続きなどを紹介します。
発信者特定で、ネットの書き込みを行った人物を知る
あるユーザーに書き込まれた情報が自分の名誉を損なって、相手を訴えたいという状況になったとします。しかし弁護士の元、慰謝料請求を行おうとしても、まず相手方の名前や連絡先、住所などが不目なため、請求自体を行うことが出来ません。
第一歩として行うべき対応はまず「相手を知ること」です。リアルな現実の問題でトラブルにあって、相手を訴えたい場合には、既に相手方の情報がわかっている場合がほとんどです。
しかし、インターネット上でのトラブルについては状況が変わります。相手の情報は、インターネットの情報の海の中で、隠された状態になっています。こちらからアクションを起こさない限りは、匿名性の衣は変わらず私たちを阻みます。
相手方の情報を掴むためには、特定のための発信者開示請求が必要になるのです。
プロバイダ責任制限法とは
ネットの書き込みやコメントでトラブルに発展すると、被害にあった自分と、書き込みを行った情報の発信者とサイト管理者、また慰謝料などを請求する場合には弁護士、そして、状況によっては、書き込みに便乗した他のユーザーまで、多くの人が関わってきます。
そのため、被害者やサイト管理者、また書き込みを行った発信者などの責任範囲をまとめた法律が2002年5月に制定されました。
WEBサイトは書き込みよるトラブルなどが起こらなければ、通常通りの運用がされている状態のため、問題ありません。しかし書き込みの内容が名誉棄損などに該当してしまった場合などには、火種となった原因の責任範囲が曖昧になってしまう傾向があります。
プロバイダ責任制限法はこのような状況に対して、被害者・サイト管理者・インターネット接続業者(プロバイダ)・書き込みを行った発信者の、それぞれの責任範囲が定められています。
発信者の特定に関して必要な手続きや、情報削除などについて必要な手続きに関しては、この法律の規定において進めていきます。
発信者特定と送信防止措置
情報の発信者を特定するためには、情報の開示請求が必要で、これについては下に詳細を解説します。
相手方の特定ではなく、発信者に書き込まれてしまった情報、そのものを削除したい場合には、情報削除の申請を行います。これについては「送信防止措置」という手続きにて定められています。いずれもプロバイダ責任制限法によって定められた様式を利用して削除の請求を行う必要があります。
情報の削除を行いたい場合には「送信防止措置依頼書」を記載し、発信者を特定したい場合は「発信者情報開示請求書」をサイト管理者へ送付します。
発信者特定を行っても良い要件
開示請求により、発信者の情報を特定するためには、必要な要件が定められています。これらは、プロバイダ責任制限法4条1項に定められていて、各項目を整理すると、下の5つから成り立っています。これらの要件を満たしていることで、開示の請求を行うことが可能になるのです。
例えば、5chなどの掲示板サイトや、twitterなどのSNSサイトのユーザー数は多く、全ユーザーに対して発信者特定の権利を与えていたら、開示の手続きを行うサイト管理者側の運用が立ち行かなくなります。これらの要件の元でのみ、発信者特定を請求することが可能になります。
- 不特定多数が見られる状態で、情報が発信されていること
- 権利侵害が明らかであること
- 発信者情報の取得に正当な理由があること
- 相手が「開示関係役務提供者」であること
- 開示関係役務提供者が発信者情報を保有していること
情報が限られたユーザーのみではなく、不特定多数が見られる状態で情報が発信されていて、権利侵害が明らかであること、これらはネットの書き込みがされた状況についての言及です。
また、無差別にどんな理由でも開示請求が通るわけではなく、書き込みが名誉棄損に該当するなど、正当な理由が必要です。
開示関係役務提供者は、この場合サイト管理者やインターネット接続業者のプロバイダに該当します。サーバーに記録されたIPアドレスや、ネット接続時の端末に関する情報など、ユーザーに関する何らかの情報を保有していて、それらが請求者にとって必要で、正当な理由がある場合に、発信者の特定が認められます。
発信者特定のための開示請求
発信者の情報を特定するためには、サイトの管理者に対してIPアドレスを開示するよう、またインターネット接続業者のプロバイダに対しては、発信者の氏名や連絡先などを開示するよう請求する必要があります。
自分自身の名誉を傷つけるユーザーに対して訴えを起こすためには、自発的に管理者に対して請求を行うことで、問題解決に進むことが可能になるのです。
開示請求とは?
相手方の情報を掴むために必要な手続きが「「発信者情報開示」です。自分が他のユーザーの書き込みによって不利益を被った場合には、相手方の情報を把握するためにサイト管理者や接続業者のプロバイダに対して「相手の情報を教えて下さい」と、請求を送るのです。
- サイト管理者に対してのIPアドレスの開示請求
- 開示が拒否されたら仮処分
- プロバイダに対して開示請求を行う
自分の名誉に関わる書き込みがされてしまった場合、問題解決に焦る気持ちが湧いてきます。理不尽な書き込みを行った、相手のユーザーや、サイト管理者に対して、何らかの措置を行うように解決を急ぎたくなります。
しかし開示請求を行い、問題解決に必要な情報を取得するためには、上の正しいステップを踏んで進めていくことが重要です。
発信者特定に必要なIPアドレスの開示
自分が消したいと考えている情報が書き込まれてしまったサイトの管理者は、自分が欲しいと考えている相手方のユーザーの情報を全て保有しているわけではありません。
特に掲示板サイトなどでは、ユーザーは自分のアカウントを作成しなくても、ブラウザ上から直接、自由に発言を書き込むことが可能です。
まずは、書き込みを行った相手方のIPアドレスを把握して、このIPアドレスから辿れる情報を以て、発信者の名前など個人情報の取得に進みます。 「発信者情報開示請求書」に必要事項を記入し、サイト管理者に対して請求を送ります。
裁判所の仮処分について
セオリー通り、開示請求を進めたとしても、何らかの理由で、サイト管理者から開示を拒否されてしまう場合があります。この場合には、裁判所を通じて、サイト管理者に対して、開示してもらうよう「仮処分」の手続きを進めます。
仮処分についても、誰でもが無条件に申請出来てしまう仕組みであれば、ユーザーの申請が殺到してしまう自体になってしまいます。そのため、下の2つの要件を満たす場合のみ、仮処分が申請できるという形となっています。
- 被保全権利
- 保全の必要性
被保全権利とは、開示請求を行う必要性です。書き込みによって、権利侵害されてしまったことが明白である必要があります。保全の必要性は、書き込みに対して、このまま措置を行わないと、被害者の社会的な評価が下がってしまうことが明白であるという必要性です。
仮処分は、裁判所を通じて行う法的な措置です。被保全権利は、4条1項の定める「発信者情報開示請求権」に当たります。プロバイダ責任制限法はこのようなネット上のトラブルによって発生する法律的な問題を整理し、問題解決が進められるように定められています。
サイト別の発信者特定の方法
発信者特定の方法は、基本的には、上に挙げたようにサイト管理者に対して、IPアドレスの開示請求を行う。IPアドレスが開示されたら、プロバイダに対して開示請求を行う、この流れで進んでいきます。
特定を行うサイトの矛先が、掲示板サイトであるのか、またはSNSとなるのか、によって、若干申請方法に差異がありますので、サイト別に申請方法を見ていきましょう。
5chの発信者特定の方法
5chで発信者特定を行う場合には、運営元に対して、IPアドレスの開示請求を行います。任意での開示請求は拒否される可能性が高いため、仮処分も合わせて検討していきましょう。
特に5chなどの掲示板サイトは、スレッドに書き込みを行うときに、名前やメールアドレスを省略して、書き込みを行うことが出来る仕様となっています。
運営者側は、どのようなユーザーが書き込んできたのか、ユーザーのアカウント情報などを保有していません。そのため、まず書き込みの時に、ユーザーの端末から発せられるIPアドレスを把握して、その情報を以て、プロバイダ側へ情報開示の請求を行うよう進めていきます。
twitter上での発信者特定は?
twitter自体は、情報開示請求について、運用側の姿勢を明示しています。世界中の各国で、年間どのくらい情報開示請求が行われているか、などもデータとして、提示されているのです。
開示請求の手続き自体は、twitter社に対して、申請します。ツイッター自体は、投稿者の情報を把握していますが、書き込みの投稿者についての情報はIPアドレスとタイムスタンプによって把握します。twitterは外国法人のため、仮処分は東京地方裁判所で行いましょう。
LINEの発信者特定の方法は
LINEは基本的に招待制でメッセージのやり取りを行うため、連絡先などが不明なユーザーの書き込みに対して、発信者特定を行う必要性が発生する事態はあまりありません。刑事事件として取り扱われる事態に進むと、警察などからLINEに対して、情報開示の請求を行う事例もあります。
これには理由があり、実のところ、LINEには「プロバイダ責任制限法」が適応されません。
この場合にのみ、法律が適応されることとなるのですが、LINEはこの範疇に含まれないのです。
この一文の意味は、プロバイダ責任制限法が、誰でもがアクセスできる掲示板などを想定していて、LINEのように個人間のやり取りを前提としているわけではないということです。そのため、この法律の適応下で自ら申請を行うということが出来ません。
もし被害を受けてしまい、どうしても相手を特定したいという場合には、警察を頼りましょう。
まとめ|発信者特定は臨機応変さが必要
悪意のあるユーザーのネガティブな書き込みによって、発信者の特定が必要な場合には、冷静な対処が求められます。どこに、どのような方法で申請を行い、問題解決を図るか、法務局などでも相談に乗ってもらえますので、専門家の見解を聞きながら、対処していきましょう。